はじめに
GWの学び直し
私は現在取適法に関連する内部監査業務を担当しています。
連休を利用して、日頃の監査業務を支える知識の土台を固めるために本書「取適法対応100の法則:大月雅博氏と木崎健太氏による監修:日本能率協会マネジメントセンター」を手に取りました。
なぜこの本を選んだか
Amazonで「取適法」で検索したときに、いくつか候補が出てきましたが、この本の評価が高かったためです(4.5点/5点満点。確認時点で総評価数は35件)。
本書の概要と「100の法則」という形式
本書では、膨大な「取適法」に関するルールを、100のポイントに凝縮しています。
辞書的に使えるので、実務で「これってどうなんだっけ?」と迷った時に立ち返れる一冊である点が良いと思いました。
私がハイライトした「5つの学び」
学び①:多くの企業で実施されている「月末締め、翌々月末払い」の慣習が、法律違反の可能性があること
本書では、支払期日の制限について以下のように述べられています。
たとえば、3月1日に納品を受けた場合、4月29日(3月1日を含めて60日後)までに支払う必要があります。「3月末締め、5月末払い」という条件だとしたら、単純計算で92日となり、明確な取適法違反となります。
(出典:『取適法対応100の法則』40-41頁より引用)
→本書の内容から、私は取適法が適用される取引の場合、「自社の支払いルールに従っていました、という説明は通用しないケースがある」ことを学びました。
となると、どうすればよいのでしょうか?
取適法が適用される取引にあらかじめチェックを入れておき、当該取引については、支払期日を自社ルールよりも早めるコントロールが整備されているか、運用されているか、それをモニタリングする仕組みがあるか、というあたりが監査の観点になるのではと私は考えました。
学び②:中小受託事業者になる判定基準
本書では、中小受託事業者になる判定基準について以下のように述べられています。
重要なのは、資本金と従業員数のいずれか一方の基準でも満たせば中小受託事業者となることです。たとえば、資本金5億円であっても従業員が200人であれば、製造委託において中小受託事業者として保護を受けることがあります。なお、資本金の要件から判定を行い、資本金で対象外の場合は従業員数の要件をチェックします。
(出典:『取適法対応100の法則』65頁より引用)
→本書を読む以前から、私は資本金区分と従業員区分で判別することは認識していましたが、優先度としては、先ずは資本金があること、その後で従業員数であることは初めて学びました。
また、資本金区分と従業員区分はand条件ではなく、or条件であることも理解しました。
学び③:変更のコストは変更を求めた側が負担するのが基本
本書では、変更のコストを誰が負担するかについて以下のように述べられています。
システム開発の世界では、仕様変更は日常茶飯事です。しかし、それを「よくあること」として受注者側に負担を押し付けることは許されません。変更には必ずコストが伴い、そのコストは変更を求めた側が負担すべきなのです。
(出典:『取適法対応100の法則』95頁より引用)
→私は、内部監査業務に就く前は、SE(システムエンジニア)でした。
ほぼお客様先に常駐していたため、システム開発や運用保守のプロジェクトを遂行するにあたり、仕様変更対応は常に頭を悩ませてきた問題でした。
具体的には、この変更にかかるコストはお客様に請求してよいものなのか、それともこちら側で負担すべきものなのか、ということです。
明確な判断基準は、当時私が知る限りでは存在しなかったと思います。
本書を読み、「その変更を求めた側がコストを負担すべき」という考え方は単純明快で分かりやすく、周囲の共感を得られやすいのでは、と考えました。
なお、本件は内部監査に直接関係する学びではありませんが、元SEとしては知っておきたいことだったので、ハイライトしました。
学び④:パートナーシップ構築宣言と取適法の関係
本書では、パートナーシップ構築宣言について以下のように述べられています。
パートナーシップ構築宣言とは、企業が取引先との共存共栄の関係構築を目指して自主的に行う宣言です。この宣言は任意の制度であり、公的機関による強制的な監査や調査は実施されません。また、宣言内容に違反しても直接的な罰則は存在しないというのが基本的な仕組みです。
(出典:『取適法対応100の法則』184頁より引用)
→本書を読み、パートナーシップ構築宣言とはどのようなものかについては理解できました。
一方で、それが取適法とどのように関係があるのでしょうか。
私の理解は以下です。
パートナーシップ構築宣言は、企業がサプライチェーン全体で共存共栄することを対外的に表明するもの。その主な内容には、取引先や中小企業との適正取引、価格転嫁の配慮、長期的な協力関係の構築が含まれる。法律ではないため、違反しても直接の罰則はないが、もし宣言しているにも関わらず、取適法に違反すると、虚偽の宣言をしたことになり、直接の罰則は受けないものの、レピュテーションリスクが顕在化する、ということだと理解しました。
つまり、パートナーシップ構築宣言をしている企業に対して内部監査を行う場合は、取適法違反に該当する事例が存在していないか、より注意してよく視て調べる必要があるのだな、と理解しました。
学び⑤:自家利用役務は原則対象外だが例外あり
本書では、「自家利用役務」と取適法の関係について、以下のように述べられています。
委託する側が自分自身で利用するサービス、いわゆる「自家利用役務」の提供を委託する契約も、原則として取適法の対象外となります。企業が弁護士や公認会計士、産業医といった専門家と顧問契約を結ぶケースがこれにあたります。
(出典:『取適法対応100の法則』213頁より引用)
→私は本書を通じて、「自家利用役務」という言葉を学びました。
ただし、例外もあるようで、本書には以下のように述べられています。
ただし、自社向けでも、取引が製造委託、情報成果物作成委託のいずれかに該当し、かつ資本金等の要件や従業員数要件を満たす場合には取適法の適用対象になります。自社利用のソフトウェア開発業務を他社に委託した場合などが挙げられます。
(出典:『取適法対応100の法則』213頁より引用)
→自家利用役務=取引適法の対象外とはならないのですね。
自家利用役務でも、委託する業務の種類によっては、取適法の対象になる場合がある、ということを学ぶことが出来ました。
まとめ
本書を読み終えたことで、取適法に関する専門知識を深めることが出来たと思います。
そしてそのことは、これまでの業務が点と線でつながる感覚がありましたので、購読して良かったと思っています。
GW中の読書は、日常の忙しさから離れて「そもそも何のために監査をしているのか」を見つめ直す良い機会になりました。
GW明けからは、いよいよ往査に向けた準備など踏み込んだ対応が必要になりますが、この「100の法則」で学んだことを覚えておき、適切な監査を行いたいと考えています。
